秘書は見た!

「秘書は見た!」

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秘書は見た!

「いやー、こんなに先のわからない展開は久しぶりだわ」
大ベテランの国会秘書や職員が口をそろえた、国会最終盤だった。
先を読めなくさせた要素はいくつもある。

・高市総理の答弁拒否が原因で国会が止まり、内閣提出法案の審議が滞留している。
・しかし、高市総理は国会に出たくない。
・その上、なぜ今やる必要があるのかわからない議員立法が、バタバタの中で出てきた。
・自民党にも「こんなのやりたくない」というムードがありあり。やりたいのは維新と、維新しか頼れるものがない高市総理だけ。
・衆議院は数の力で押し通せるが、参議院では「少数与党」で、多数派工作が必要になる。
・しかし、高市総理は国会に出たくない。維新は自分たちの利権を捨てたくないから譲らない。

このあたりがこじれまくり、まったく見通しがつかなかった。
一部では、「高市総理が60日間の会期延長を指示した」という噂が流れ、野党国対も「受けて立つ」となったという。
しかし、それをやったら困るのは、参議院自民党なのだ。

少し経緯を振り返る。
6月後半、参議院の審議はストップした。
その原因は、高市総理が野党の要求に応じず、説明責任を果たそうとしなかったことにある。

このとき野党が求めたのは、
①総理の帰朝報告を議事録に残る形で行うこと
②答弁訂正を総理自ら委員会の場で行うこと
③総理の公設第一秘書を参考人として招致すること
この3点だった。

ここで、高市総理が「会期の60日延長」に言及したことで、参院自民党から怒りの声が上がった。
なぜか。
衆議院で可決された法案は、参議院で否決されても、衆議院で再び審議し、3分の2以上の賛成があれば成立する。
さらに、参議院が60日以内に議決しないときは、「否決したもの」とみなされ、衆議院は再可決に持ち込むことができる。いわゆる「みなし否決」だ。
2月の総選挙で大勝した高市自民党は、戦後初めて単独政党で3分の2の議席を獲得した。ルール上は、この制度を使うことも可能だ。
しかし、本当にそれをやれば、党内の溝は修復困難なまでに広がる可能性がある。
高市総理が自ら、「参議院での議論は必要ない」というメッセージを発したことに等しいからだ。

そんな緊張が続く中、与野党の協議が進んだ。
そして、「国旗損壊罪法案」「副首都法案」をめぐって、激しい論戦が展開された。

国旗損壊罪法案。これほど筋の悪い立法も記憶にない。
「立法事実」を提出者すら説明できず、違憲立法の疑いが濃いと、ほとんどすべての憲法学者が指摘した。
これが内閣提出法案、いわゆる閣法として出されなかった理由は明白だ。
刑事罰を含む法律には、本来、慎重な審議が必要になる。法制審議会で議論し、他の刑罰法規との整合性をとらなくてはならない。内閣法制局というハードルもある。
そこを突破できる見通しがなかったからだ。

そして、副首都法案。
誤解を恐れずに言えば、久々に「国会らしい国会」を見た。沖縄北方地方委員会での質疑では、立憲、国民、参政、共産まで、実に見応えのある議論を展開した。
とくに、共産党・大門実紀史議員の、
「京都人なら『副』なんてプライドが許さない」「同じ関西人として情けない」
との発言に、委員会は大盛り上がり。

これらは参議院インターネット審議中継でも見ることができるので、ぜひ。

副首都法案をめぐっては、「採決をするか、しないか」で、水面下の協議が繰り返された。
野党が採決に応じないまま会期が終了すれば、法案は廃案になる。参議院自民党はそれでもいいと考えていた節さえあるが、高市総理が「絶対に通せ」と強烈な圧力をかけてきたらしい。
そこで、冒頭の「60日間延長」が出てくる。参議院自民党は、それだけはやりたくない。採決に向けた条件闘争が行われた。

最大の争点は、「首長選挙と住民投票の同日実施」だった。
維新の吉村代表は、来年4月の統一地方選挙、大阪府知事・大阪市長選挙と、3度目の都構想住民投票を同日に行う意向を早くから示していた。
「コストが安く済むから」が表向きの理由だが、本当の狙いはそこではない。

本来、住民投票では市民が自由に運動できる。ビラをまいたり、街頭で訴えたりすることが、誰にでもできるのだ。
しかし、選挙期間に入ると事情が変わる。
選挙で候補者を立てた政党や団体は、維新は当然候補者を立てるが、「選挙運動」として堂々と訴えることができる。でも、市民側は規制される可能性が出てくる。少なくとも、萎縮効果がある。候補者を立てなかった政党も縛られる。

投票が重なれば有権者も何が何だかわからなくなり、露出の多い陣営に票が流れることは想像できるし、メディアも報道しづらくなる。

これが、維新のお約束のやり方なのだ。
2月の解散総選挙でもそうだった。「高市解散」が決まった後、いきなり吉村知事と横山大阪市長が「都構想住民投票の是非」を掲げて辞任し、「出直し選挙」とやらを行った。主要政党は「税金をかけて、ばかばかしい」とスルーし、候補者を立てなかった。

しかし、首長選の告示から投開票までの間、公職選挙法は、街頭演説やポスターの掲示、ビラの配布、拡声器の使用などを原則として禁じている。候補者を立てた維新は、条件付きとはいえ、ほぼ問題なく活動できる。そのせいで、衆議院選挙が告示される前の5日間、私たちは通常の政治活動を制限された。
普通ならラストスパートをかける時期に、街頭でのビラ配りや、マイクを持っての訴えができなかった。いわゆる「空白の5日間」だ。
違法行為ではない。しかし、制度の趣旨をねじ曲げた悪用としか言いようがないのだ。

国会に話を戻す。
立憲民主党をはじめとする参議院の野党は、「同日実施は避けるべきだ」と求めた。
維新の法案提出者は吉村「代表」に確認をとり、
①住民投票期間と選挙期間が重複しないよう、最大限調整することが重要である。
②やむを得ず重複する場合には、自由・公正を損なわないよう検討し、有権者の混乱を防ぐ。

と答弁した。
「やむを得ず」では、何の歯止めにもならない。野党は、②を撤回するよう求め続けた。自民党ももちろん了承したが、維新が絶対にうんと言わない、ということだった。

これが事実上の最終日である7月24日(金)になっても決着せず、私たちは、
・採決で法案が否決されれば、土曜日に国会を開いて衆議院で再可決されるのではないか。
・採決が見送られれば、60日間会期延長して再可決するのではないか。その間に「定数削減法案」なども出てくるのではないか。
など、さまざまな可能性を想定し、事実上の「禁足」となった。

そして、この日の夕刻、止まっていた沖縄北方地方委員会が再開されたが、採決に至るかどうかはわからない。しかし委員会の途中で、維新側と合意がとれたらしい。
先の②の文言を落とし、①だけにすることで、維新との確認がとれたということであった。もちろん、吉村代表のゴーサインがなければ、できるはずがない。
その結果、附帯決議にも、「住民投票期間と選挙期間が重複しないよう最大限調整すること」という文言が盛り込まれ、維新も賛成した。

それでも、本会議でこの法案が成立する保証はなかった。参議院では少数与党だからだ。・・・チームみらいが賛成票を投じるまでは。
こうして副首都法案は成立し、国会は閉会した。

吉村知事が「同日選を目指す」と発言したのは、法案成立直後だった。
維新に振り回されてきた与野党の議員は、みな開いた口がふさがらなかった。
この間、維新の意思決定をしてきたのは、あなたではないのか。知らないとは言わせない――。自民党議員こそ、そう思ったはずだ。

ネット上では、維新の支持者だけでなく、一部の「革新政党」支持者からも、「法的拘束力のない附帯決議を信じた野党が悪い」という声がある。
本当にそうか。
立法府は、長い時間をかけてルールをつくってきた。法律のような拘束力はなくても、与野党の信頼関係を大事にしようというのが附帯決議だ。長い時間をかけて、与野党がつくり上げてきたルールなのである。
それを、「附帯決議には実効性がないのだから仕方がない」と現状を追認するのでは、維新と同じではないか。「現実に合わせて憲法を変えろ」という暴論と、変わらなくなってしまう。

つくづく思うが、今の国会には、「右」「左」よりも、もっと大きな対立があるのではないか。
議論を大切にする。プロセスを重視する。「民主主義政党か否か」こそが、本当のミシン目なのではないか。
そう思えてならない今日この頃である。

<追記>

辻元がXで論点を発信し続けた「皇室典範」改正案。
辻元が参政党の神谷代表と一緒に出演したテレビ番組では、神谷代表とのやりとりが注目された。
このやりとりを切り抜いた動画がSNS上で拡散し、「愛子さまはOK」と言わされてしまった神谷代表は、自分のXですぐに訂正していた。

<主なやりとり>

神谷代表「遺伝子です」

辻元「遺伝子! DNA検定するの。途中で途絶えている可能性もあるんですよ。何百年ですから。よその関係ない人たちが跡目争いで入ってきている可能性もあるし、途中に女系が挟まっているかもしれないですよ。DNAの検査をして、Y染色体を『これは正しいですよ』って国民に見せるんですか」

神谷代表「皇室や、例えば古墳は、DNAにはかけないということになっています。皇室の方に関わることをすると、もめごとになるので」

辻元「じゃあ神話ですか。男子男系というものが何なのかっていうのがわからない。どこが伝統なのか。何で愛子さまはだめなの。女だから?」

神谷代表「いや、誰でも一般男性が入ってこられるとするのではなくて。女性は皇室に入れるんですね、結婚すれば。男性がそこに入ってくると、遺伝子が変わってくるから、家が変わっちゃうよねという考え方」

松原キャスター「男子の遺伝子じゃないとダメなの?」

神谷代表「男子の遺伝子でつないでいくというふうに、日本はやってきた」

辻元「何で愛子さまやったらダメなんですか。愛子さまは、今ご公務をされて、各国の王女様とも一緒に交流されたりしてね、国民にも敬愛されているじゃないですか。そして、今の両陛下の長子でいらっしゃる。愛子さまがダメで、何百年か昔の男の人だったらいいという意味がわからない」

神谷代表「愛子さまがダメっていうのは、何がダメなんですか」

辻元「愛子さまが天皇になるのはダメなんでしょ」

神谷代表「いや、そんなことは我々は言ってないです」

辻元「え!?」

松原キャスター「女性はオッケー、女系はだめだということ?」

神谷代表「一応、男の方がいるときは男性優先でも、いないときは女性でつないでいったこともあるので」

辻元「そうなの。じゃあ女系はダメなの? 愛子さまの子どもさんは何でダメなの」

神谷代表「女系は遺伝子が変わるというふうに考えられるからでしょ」

その後、「養子案以外に、皇族数を増やす方策はあるのか」と神谷代表。
いや、皇族数の確保という観点で言えば、たとえ養子が入られたとしても、男子が生まれなければ不安定になることに変わりはないと思う。
その意味でも、女性・女系を認める方が理にかなっていると思うのだが。
この議論は、引き続きやっていかなくては。

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