「秘書は見た!」
この選挙はまず、寒さとのたたかいだった。
辻元は全国をかけまわり、私たち秘書は尾辻かな子さんの選挙応援のため、国会の事務所を閉じて大阪へ。
短い選挙戦、なるだけ多くの有権者に訴えられるよう、いつも通り朝も夜も駅頭で演説+ビラまきを行うわけだが、寒さのなかこれがきつい。
あらかじめ、ワークマンの「電熱ベスト」や「裏起毛極厚靴下」を入手してなければ、前半でリタイアしていたに違いない。それでも、雪がちらつくなかで早朝2時間たちっぱなしが続いたせいか、腰痛がひどくなり座り作業ができない有様ではあったが。
今回は選挙事務所探しにも苦労した。この突然の選挙で、全国的に不動産物件が見つからないという声は聞こえていたが、大阪も同様だった。
私が入った選挙事務所も、スケルトン状態で借りざるを得ず、突貫工事で床を張り、トイレを設置し、電線を引いて間に合わせた。トイレに明かりがついたのは公示日前日で、妙に安心したのを憶えている。
そして大阪の選挙戦で、「高市旋風」を感じることはほぼなかった。自民が「高市総理を支えるのは自民党、だから自民党の○○候補をよろしく」とアピールすれば、維新は「高市総理のアクセルは維新、だから維新の△△候補をよろしく」とやり返す。しかし、人も集まらず聴衆が耳を傾けている様子はなかった。
本当の「論点」は何か。
論戦がかみ合うことなく、静かに選挙戦がすぎていった。
月曜日。投票日の翌日は、恒例の駅頭での「おはようございます」の後、選挙事務所の片付けへ。あちこちから集めてきた備品を戻しても、大量の荷物が残る。今後の処理を考えると頭が痛いが、とにかく新幹線で国会に戻ることに。
火曜日。ここから、落選議員の事務所撤収のお手伝いに。
辻元のときもそうだったが、落選した場合は投票日から4日後、木曜の夕方までに国会議員会館の事務所を返さなければならない。
ただでさえ選挙でボロボロになった身体にむち打っての撤収作業は本当にきつい。睡魔に襲われ、判断力が乏しくなる中で捨ててはいけないものも捨ててしまいかねない。
山のような書類や備品を仕訳し、残すものは段ボールへ、でもほとんどは廃棄。
現代政治の歴史的資料ともいうべき資料や書籍を両目つぶって廃棄しながら、あらためて今回の選挙で何が失われたかを痛感することになった。
とくに、我が党は小さなNPO・NGOや市民運動をサポートしてきた議員が多い。そうした方々がいなくなる弊害は、とたんに出てくるはずだ。
多くの市民団体が、議員会館の会議室を議員に借りてもらい、院内集会などをやっていた。
しかし今後は集会の会場探しから苦戦することになるだろう。無料で、国会議員も官僚も来やすい、そんな使い勝手のいい会場は議員会館しかないからだ。
市民運動関係だけではない。さまざまなジャンルで、これまでちらばっていた依頼が残った少数の事務所に集中することになる。
資料請求したり、省庁要請を行ったり・・・参議院議員の事務所はますます大変になるぞと考えながら、廃棄書類の束を台車に積んで運び続けた。
手伝いにいった先で、「よかったら使って」とA4コピー用紙を大量にいただく。
水曜日。同上。ぼちぼち終わりがみえる事務所があらわれる一方、厳しい事務所はますます厳しい。給湯室の整理が手つかずだったりする。
木曜日。表向きのタイムリミットは16時30分。そこまでに、「安全ピンひとつ残さずきれいにして引き渡し」が原則だ。
いくつか残った事務所に、すでに撤収を終えた秘書や、参議院の秘書がやってきて片っ端から片付け。「これ、もういいよねっ」「念のため残しておこうかと・・・」「必要ならそのとき買えばいいじゃない!」と殺気だちながら事務所がきれいになっていく。
そして、ようやく全事務所の撤収が完了。
仲間との別れを惜しむ余韻などない。
今回、立憲系の議員は144名から21名と85%減った。すなわち123名が落選。
議員・候補者が熱を伝えることでしか、結局政治は動かない。そうした熱の発信源がこれだけ一気に減るのは前例がないのではないか。
同時に、熱を伝えるのは議員だけではない。議員の発する熱を増幅させ、細やかに拡散させるのは秘書の役目だ。
その秘書仲間が大幅に減る。
各事務所に公設秘書が3名、私設秘書を加えると500名以上のかたまりが、いったん仕事を失うことになった。
落選した議員の多くは、自分の生活すらままならず、秘書たちの雇用をまもる余裕はほとんどない。秘書たちも議員の財務状況はわかっているから、とにかく生活するために、他の仕事を探すことになる。
普通であれば、まずは同じ党内で異動できる事務所を探す。しかし、今回はそんな数ではない。議員の絶対数が足りない以上、多くは他党を探したり、政治以外の仕事を探すことになる。
これが党にとって、計り知れないダメージだ。
秘書の仕事については、世間で十分に知られているとはいえない。国会の会館秘書と地元秘書では業務がまったく違うのはもちろん、党が同じでも仕える議員によって求められる力があまりに違う。ある議員事務所では当たり前にやっていたことが、別の議員事務所ではまったく不要な技能(や気遣い)となる。
ひとくちに秘書といっても、得意不得意や仕事へのアプローチは相当異なるのだ。
ただ、共通しているのは「選挙」だ。
自分が仕える議員の選挙はあたりまえ。
補欠選挙があれば全員でたたかったり、衆議院の選挙があれば参議院の秘書が、参議院の選挙があれば衆議院の秘書がヘルプにはいり、自治体議員選挙で地元に入る秘書もいれば、会館に残ってできる支援をする秘書もいる。
とにかく、選挙は最優先でやるのがこの仕事。
とくに立憲は、東京での大きな街頭演説があるときは秘書もお互いに声掛けして現場にいき、ビラをまいたり、交通整理をしたりと、秘書と党職員はともに汗をかいてきた。
現場でのトラブル処理にたけた人や、支持者に丁寧な対応ができる人、動画配信ができる人など、さまざまな技能を持ち寄ることで、急な政治の動きにも対応してきたのだ。
そうした「たたかう人材」が数百人単位でいなくなる。その影響の大きさを考えると気持ちが沈むのだ。
選挙の後半戦、辻元は必死に危機感を訴えた。
この選挙は、日本の「専守防衛」をなくすかどうかが本当の争点だ、と。
当初は「高市早苗が総理でよいかどうか」などとごまかしていた高市総理は、同時に「国論を二分する政策」を問うと言い出した。
その中身は、自民と維新の連立合意書である。
合意書には「スパイ防止法」「5類型撤廃」「旧姓使用法制化」などが並ぶ。
https://storage2.jimin.jp/pdf/news/information/211626.pdf
なかでも、高市総理の狙いは「三分の二」を得て憲法改正に踏み切ることだ。
合意書には「日本維新の会の提言『二十一世紀の国防構想と憲法改正』を踏まえ、憲法九条改正に関する両党の条文起草委員会を設置する。」と書いてある。そこでこの「提言」には、こうした記載がある。
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我が国が集団的自衛権行使を全面的に行使可能とするためには、同様に、既に時代遅れとなった憲法9条2項の削除が不可欠であり、現下の国際情勢に鑑み、早急に実現を図るべき課題である。
このように、憲法9条2項削除に伴い、憲法9条2項に則った概念と考えられる「専守防衛」概念は当然取り払われるべきものである。それに伴い、我が国防衛の新たな基本方針として、必要不可欠な防衛力を能動的に行使する「積極防衛」に転換することが考えられる。
https://o-ishin.jp/news/2025/images/ffb6c1d44a679a512165021651f6f62f12d52755.pdf
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憲法9条2項を「削除」して集団的自衛権を全面的に使えるようにし、専守防衛をやめて、「能動的に」戦争をしかけられる国にする、というのだ。
未来を担う子どもたちのためにも、絶対に阻止しなければ。
近い支持者には、ギリギリこの訴えが届いたと思う。
しかし今回の選挙では、そこから先に広がっていく感触がなかった。
今後、政治がどう動いていくかは不明だ。
でも、この危機感だけは拭うことができない。
いまいる人でできることは何か。考え続ける日々である。

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